褒めるだけの育て方は危険
子育ての段階において、とにかく子供のすることを全て褒める、というやり方が広まった時期がありましたが、これにはリスクが伴います。 子供の発達段階における思考、感情には、親の反応を見て自分への関心を引こうとする、などを始めとする揺らぎが存在する為、それらを含めて全てを褒めるやり方をとっていると、子供の心理に思いがけない疎外感を植え付ける事になってしまいます。 きちんと自分の言うことを聞いてくれていない、生返事の様に、流れ作業の様に自分の言うこと、する事を褒めている、といった風に、子供の心理は敏感に察知し、これが心の中にわだかまりとして 残っていってしまいます。 成長過程で培われるこの様な気質は非常に危険で、後々の育成段階や、最終的に大人になってからの精神や心理にも良くない影響を及ぼしかねないというデータもあるほどです。 何でも無条件で褒めているというのは、良い事のようであり、また楽な事でもありますが、それは裏を返せば無視をし続けているのだという点を、まずは認識するところからスタートしなければなりません。
親の考え方を変える必要
この様な親の側の考え方、子供を育てる、何かを与えてやるという考え方を、まずは変えて行く必要があるという事です。 子供は自分から生まれてきたとはいえ、生を受けた時点でそれ自体が独立したひとつの人格です。 どの様に育って欲しいか、という親の願望は様々にありますが、必ずしものその通りにはならず、また社会の常識や、自分の知る範囲からも大きく外れた言動や思考が見られるのも、ごく当たり前のことです。 その様な状況において、自分の想いだけに固執し、それに当てはまらない状態に対してうろたえたり、怒りや悲しみといったマイナスの感情を蓄積させていってしまいがちですが、それは子供の育成には良いこととは言えません。 結果としてどのような子供に育てたいか、という視点から、子供が持っている資質、素材としての人間性そのものを、いかにまっすぐに育てていくのか、そのサポートをするような気持ちでいるという方向に、考え方を変えていく必要があります。 これまでの育児の常識とは少し違った考え方ですが、好ましい変化をもたらすためにも、欠かせない要素であると言えます。
子供にとって認めてあげることが大事
ひたすら褒めることに対して必要なのが、子供を認める、という感覚です。 これは褒めるのと同じであると捉えられることも、少なくありませんが、両者の間には決定的な違いがあります。 まず、褒めるというのは、子供がした事の中から、一般的に良いとされている事、社会的に良いとみなされる事、または親自身が良いと思う事、などの条件付きの行動に対して与えられるものであると認識されます。 このため、子供の側は、こうすると親が喜ぶ、というデータの蓄積に終始してしまい、自分自身というものがいつまでも育たないまま放置された状態になってしまうのです。 これに対して認めるという方法は、子供が泣いたりぐずったりしている局面でも、まずその事自体を認識させ、何故そうなっているのか、どうしたら解決されるのか、といった視点が常に加味され、これによって子供の中には深い自己肯定感が芽生えます。 全ての感情や思考、行動をきちんと見守られている、という安心感であり、この自己肯定感の積み重ねこそが、幼い子供にとってもっとも大切なものであると、最近では分かってきています。
子供の育て方に変化
これまでの褒める子育ては、大きな視点から見ると、あまりにも多くの要素を無視し続けることに繋がってしまっていました。 日々の子育ての中で、大変な局面も多いという状況にこれが上手くはまってしまい、数多くの良くない結果を生んでしまいました。 成長過程にある子供は敏感で、また生物としての生存本能も活発に活動しているので、このような状態にあると大きなストレスにさらされてしまいます。 良かれと思ってしていた褒める育児法ですが、この様な事由から、世の中の流れとしても少しずつ変化し、もうひとつ大きな視点から、認める、という基本的な考え方になってきています。 これは愛情の掛け方の変化であって、これまでの親が良くない親であったという事ではありません。 ただし、取り返しのつかない間違いを引き起こさないためにも、ひとつひとつの行動に対して、それがどの様な影響を及ぼすのか、どの様な結果に繋がりうるのかということを、これからの子育てにおいてはよく考えなければならない、と言えるでしょう。 認める子育ては、その点で非常に優れた手法です